[新潟日報/昭和45年(1970年)9月21日(月)10面=スポーツ面から]
写真=玉の海よりきり大麒麟 玉の海は右四つ十分の体勢から寄りの速攻で大麒麟に快勝(蔵前国技館で)
大相撲秋場所八日目
大相撲秋場所八日目(20日、東京・蔵前国技館)は天皇、皇后両陛下がご覧になり今場所初めての¨満員御礼¨。勝ちっ放しは横綱玉の海ただ一人となった。全勝同士の玉の海―大麒麟は右四つから玉の海が一気に寄り切った。北の富士は戸田を突き落としで破り、大鵬は三重ノ海のしぶとさに苦戦したが、もろ差しで寄り切った。琴桜は藤ノ川の土俵ぎわのはたきに2敗目を喫した。平幕全勝の竜虎が黒姫山に敗れたため、1敗は北の富士、大鵬、大麒麟、竜虎の四人となった。
十両は輪島、大文字、花錦の三人が1敗を保っている。長浜も増位山を破って2敗を守った。
=十両=
柏梁 したてなげ 朝嵐
江戸響 よりきり 春日竜
富士桜 おしだし 大潮
真鶴 つりだし 丸山
花錦 ひきおとし 朝風
魁ゴウ とったり 朝登
北瀬海 すくいなげ 双ツ竜
大寛 よりきり 凌駕
大文字 つきだし 大竜川
輪島 つきおとし 琉王
白田山 きりかえし 嵐山
長浜 うわてなげ 増位山
旭国 よりきり 栃富士
=中入り後=
義ノ花 よりきり 浅瀬川
栃勇 おしだし 大雪
若浪 けたぐり 陸奥嵐
金剛 おしだし 若二瀬
照桜 よりきり 高鉄山
黒姫山 ひきおとし 竜虎
錦洋 おしだし 時葉山
栃東 よりたおし 吉王山
大雄 つりだし 二子岳
大受 おしだし 福の花
和晃 おしだし 栃王山
貴ノ花 つきおとし 高見山
清国 よりきり 長谷川
藤ノ川 はたきこみ 琴桜
北富士 つきおとし 戸田
大鵬 よりきり 三重海
玉の海 よりきり 大麒麟
黒姫、竜虎に土つける
○長浜-増位山●
長浜は立ち合いよく、さっと左上手を取った。増位はきらって突き放したが、長浜は再び左上手を引き、右から攻めて赤ふさへ迫った。しかし増位もしぶとい。左からおっつけてもろ差しになると、正面土俵へ寄りの逆襲をかけた。長浜は腰が浮いてちょっとあぶなかったが、さがりながら右上手を引き、強引に振り回すような投げで逆転勝ちした。
○黒姫山―竜虎●
黒姫が勝ちっ放しの竜虎に土をつけた。竜虎が頭から突っ込むと黒姫もよく踏み込んで出た。竜虎がちょっと突っ張ると、黒姫も突き返し右から強くいなした。竜虎は泳いだがよく踏みとどまり、体勢を立て直して突っ込もうとした。その瞬間をとらえ、黒姫は右から激しく引き落として竜虎を土俵にはわせた。
○貴ノ花―高見山●
貴花が足腰のしぶとさを発揮して巨漢高見に逆転勝ちした。貴花はやや立ち遅れた。高見の突進を、左を差して食い止めようとしたが体力で圧倒されたちまち西土俵へ詰まった。しかしそこは粘り腰のある貴花。弓なりになってこらえると右から突き落としを見せた。貴花は土俵を割ったが、その寸前に高見が右から落ちていた。
○清国―長谷川●
清国は右からカチ上げて右差しをねらったが、左わきの堅い長谷に封じられて左四つになった。清国は右から強くおっつけて右上手を取り、正面土俵へ激しく寄り立てた。そして長谷がこらえるところを強烈な上手出し投げを放った。行司土俵へ大きく泳ぐ長谷。清国はすぐつけ込んで寄り立て、最後は右で胸を押すようにして寄り切った。
○藤ノ川―琴桜●
藤川が持ち前の変わり身の速さで波乱を起こした。立ち合い当たったあと、琴桜が意表をついてちょっと左へ変わった。藤川はこの変化にわずかに体勢をくずした。琴桜はすぐつけ込んで、猛然と突き立て、一気に行司土俵へ突っ走った。だが身の軽い藤川はさっと右へ変わりざま右からはたいた。目標を失った琴桜はたまらず土俵を飛び出した。琴桜は勝ち急いで詰めを怠ったようだ。
○北富士―戸田●
北富は立ち合い左を差しにいった。だが戸田は当たり勝ったうえ、右から強くおっつけて北富の左差しを封じ、右ハズから出足早に東土俵へ押し込んだ。北富はピンチに立たされたが、うまい引き足でわずかに左へ回り込み、左から激しく突き落として逆転した。戸田にいま一歩の出足があったらと惜しまれる。
○玉の海―大麒麟●
全勝同士で、しかも天覧相撲。力のはいった好勝負が予想されたが、玉海の一方的勝利に終わった。右の相四つだけに立つとすぐ右四つ。しかし玉海が先に差し手を返したため大麒は左上手が取れず、逆に玉海が上手を引いて十分の体勢となった。この瞬間に勝負は決まったといっていい。玉海は両まわしを強く引きつけて速攻をかけ、大麒を一気に正面土俵へ寄り切った。玉海の完勝だった。
…郷土力士星取表…
◇十両
長浜(時津風・新発田)○○○○○●●○
◇三段目
尾堀(出羽海・羽茂)○や○やや○や○
大安藤(二所関・黒埼)○やや●○やや●
◇序二段
栃沢(時津風・高田)や○や●○や●や
伊藤川(伊勢海・巻)や○●やや○や●
迅雷(時津風・吉川)や○●や●や●や
20人が一番出世
相撲協会は秋場所八日目の20日、新序一番出世力士20人を発表、幕下取組の途中で披露した。この20人は序ノ口力士として次の九州場所から番付にのる。出世力士次の通り。(カッコ内は部屋、出身地)
阿久津改め玉ノ富士(片男波・栃木)安達(伊勢ノ海・山形)櫛形山(若松・山梨)木村改め江差(時津風・北海道)牧主(二子山・鹿児島)佐々木改め大佐々木(二所ノ関・京都)田村改め大田村(二所ノ関・北海道)金島改め佐田岬(高砂・大阪)松倉(立浪・富山)真(時津風・大阪)佐藤改め大佐藤(二所ノ関・秋田)新田(伊勢ケ浜・秋田)酒井(九重・北海道)馬頭山(若松、栃木)米山改め大米山(二所ノ関・山梨)吉田改め吉田山(二所ノ関・千葉)加藤(二所ノ関・兵庫)開道(春日野・石川)秋元(九重・北海道)松田改め大松田(二所ノ関・東京)。
秋場所星取表
(○勝 ●負 □不戦勝 ■不戦敗 △引分 や休み ◎勝越 ×負越)
【東】 1 2 3 4 5 6 7 8 【西】 1 2 3 4 5 6 7 8
北富士 ○○●○○○○○ ◎玉の海 ○○○○○○○○
大鵬 ○○○○●○○○
清国 ●●○○○○○○ 琴桜 ●○○○○○○●
(西張出大関)前乃山 やややややややや
大麒麟 ○○○○○○○● 三重海 ○○○●●●●●
長谷川 ●●●○○●●● 貴ノ花 ●●○○○●●○
…………………………………… ……………………………………
和晃 ●●●●●●●○ ×栃王山 ●●●●●●●●
福の花 ○●○●●○○● 戸田 ○○●●○●●●
大受 ●○●●●○●○ 高見山 ○●●●●●○●
藤ノ川 ●○○○○●●○ 二子岳 ○●●●●○○●
時葉山 ●●●●●○○● 栃東 ○○●●●●●○
錦洋 ●○○●●●●○ 黒姫山 ○●○●●○●○
若二瀬 ●●○●○○○● 照桜 ●●●○●●○○
若浪 ○○●○○●○○ 大雄 ○●○●●●●○
栃勇 ●●●○○●●○ 金剛 ●○●○●○○○
陸奥嵐 ○○●○○○●● 吉王山 ●●●●○●○●
竜虎 ○○○○○○○● 高鉄山 ●○○●○●○●
大雪 ○○●○●○●● 義ノ花 ○●○○●●●○
…九日目取組…
=中入り後=
東 44秋九45初春夏名 西
陸奥嵐 ×( )× 琉王
栃勇 (初顔合わせ) 吉王山
金剛 (初顔合わせ) 大雄
若二瀬 6(-○●---)4 若浪
大雪 2(--●●○○)2 黒姫山
錦洋 (初顔合わせ) 義ノ花
照桜 1(-----○)0 栃東
時葉山 4(--○○-○)5 高鉄山
藤ノ川 5(○--●●-)3 竜虎
大受 0(----●●)2 高見山
長谷川 1(-----○)0 和晃
大麒麟 4(-●-○--)2 二子岳
三重海 1(-----○)0 琴桜
清国 1(---○--)0 貴ノ花
栃王山 0(----●-)3 玉の海
北富士 9(○-●-○○)3 福の花
大鵬 4(○○----)1 戸田
(×印は十両との対戦)
好取組
▽三重海―琴桜
三重が食い下がるか、琴桜が一気に押し込むか。初顔合わせの先場所は、三重が立ち合いの変化わざから押し出しで勝っている。しかし、三重の本領はなんといってもしぶとさにある。左を差し、右で横まわしを引いて頭をつけ、出し投げなどでゆさぶると面白い。琴桜は先に左上手を取って三重の動きを封じ、右ハズで攻めた方が無難だ。
▽北富士―福の花
福花はことしの初場所、張り手のカウンターパンチで北富をダウンさせた。福花右のけんか四つだが、左わきの堅い北富だけに張り手をまじえた突っ張りの先制攻撃をかけないと、右を差せないだろう。それで北富をあわてさせればチャンスもつかめる。北富は左からカチ上げるか、突っ張って右上手を引けば、寄りの速攻か投げで決めよう。
▽大鵬―戸田
今場所の戸田は立ち合いの当たりと出足がすごくいい。力いっぱい頭からガツンとぶちかましておいて押し込んだら、昨年春場所で大鵬の連勝を¨45¨でストップさせたシーンの再現も不可能ではない。しかし、大鵬がよく踏み込んで突き放し、左を差して戸田の出足を止めれば勝負はそれまで。
=十両=
東 西
柏梁-牧本
丸山-富士桜
長浜-朝風
嵐山-魁ゴウ
朝嵐-朝登
大文字-花錦
凌駕-大潮
双ツ竜-真鶴
大寛-江戸響
北瀬海-白田山
増位山-栃富士
輪島-浅瀬川
旭国-大竜川
※幕内の「郷土力士」黒姫山さんが見出しになる活躍。竜虎さんは勝ち越しに¨待った¨。「一番出世力士」の20人の中に、後の大横綱と関脇の名前が。さて、貴方はワカルかな?(笑)。輪島さんも長浜さんも立ち直りました。十両の優勝戦線にもご注目を。大文字さんも好調を維持してます。二子岳さんは大雄さんが相当苦手のようで吊り出されました(苦笑)。ファンとしては軽量同士だけに勝ってほしい相手なのですが…。注目の若浪―陸奥嵐は意外な決まり手になりましたね。
西横綱の玉の海さんが勝ち越し第1号、西前頭筆頭でベテランの栃王山さんが負け越し第1号になってしまいました。和晃さんは一息つけました。九日目は「好取組」三番の選択と予想文(取り口のアドバイス)が絶品ですよね(笑)。
尚、ケータイの「デジタルカメラ」が起動しませんので、今回は新聞の直撮りではなく、独自に画像をつけました、あしからずです。それから「さじき席」は今日はありません。